
多摩エリアの企業や行政が抱える課題(クエスト)を解決すべく、学生たちのチームが取り組むプログラム「クロッシングクエスト」。今回は、株式会社リビタのクエストに挑んだ、デザイン学部デザイン学科1年の吉⽥⼼花さん、建築学部建築学科1年の上⽥ 帆花さんにお話を伺いました。
今回のチームは、お2人ともフレッシュな1年生。上田さんは、昨年の文化祭の実行委員として忙しい日々を過ごしていたのだそう。文化祭が終わった今は、サークル活動やアルバイトにトライしてみたいそうで、積極的に新しい経験を求めているような印象でした。
子どもが好きだという吉田さんは、普段からボランティア系のサークルに所属し、子どもと関わるボランティア活動や学童でのアルバイトに勤しんでいるとのこと。元々多摩地域出身ということもあり、地元で何かやってみたいという思いがあったようです。
ーお2人は起業に興味があってクロッシングクエストに参加されたと思いますが、起業のどのような部分に興味を持ち、どのような魅力があると思いますか?
上田さん:
最初、起業と聞いてもあまりイメージが湧かなくて、何をしたらいいんだろうと思っていました。あまり深く考えていなくて、よくわかってない状態で参加をしてしまったんですけど、自分から動いて何かを成し遂げる経験がなかったので、そういう経験をしてみたいと思っていました。
中学高校では、自分で自分の考えをまとめるような課題でも、元々ある程度レールが敷かれた上で物事を考えたりとか、クラブ活動したりということが多かったんです。一から全部自分で道筋を立てるところからやるという活動は初めてだったので、新たな自分の道を開拓できたような気がします。今振り返ってもプログラムの活動が魅力的だったし、それをこの先も活かしていきたいと思っています。周りと比べて一歩先に行ける経験だったように感じています。
吉田さん:
私も似たような感じなのですが、自分自身がやりたいことが実現できるっていうのが起業の魅力かなと思っていて、私と上田さんと2人で色々話合ってやってきたことが今少しずつ形になってきているのを実感しています。自分たちでこういう風にしたいなとか、こういうものが作りたいなって思っているものが自分たちの思い通りになるというか、周りからこれをやりなさいと言われるのではなくて、自分たちの思いで物事を進めて何かをつくり上げられるのが魅力なんじゃないかなと思います。
ークロッシングクエストのことを初めて知った時に、どのような点に興味を持って参加を決意したのでしょうか?
上田さん:
大学の全学部必須のキャリアや卒業後の進路を考える授業を受けた時に、就職活動が今かなり早まっていて、3年生から始める人が多いという話を何度も先生が話されていたんです。でも実際に学校の就職センターなどから出てくる情報は、就職活動中の3年生とか、少し早まって2年生からしか参加できない情報しかないんです。
1年生のうちからいろいろやっておいた方がいいんだろうけど、何をしたら良いのかもわからないし、かと言って情報を待っていたら出遅れてしまうような気がして。そもそも社会人になることについてあまりイメージができていなかったので、今年は何か企業と接点を持ってみたいというか、企業は何をどういう風に考えて普段活動しているのかを知りたいと思っていました。
そんな時に、たまたま大学からクロッシングクエストの案内があったんです。しかも、リビタさんがリノベーションなどを扱ってる会社なので、建築学部の私としては興味があって、これは将来に活かせるかもと思って参加しました。
吉田さん:
私は元々多摩地域に興味を持っていて、何かしらの形で地域に関わりたいなっていう気持ちがありました。たまたまクロッシングデイの最初のイベントに参加した時に、同じ学生で起業したいという思いを持ってる人がたくさんいることを知り、実際に起業された方々のお話を聞いて驚いた覚えがあります。
その時は起業に興味があったわけではなかったんですけど、ひとつの経験として参加してみれば、そこで自分がやりたいことが見つかるかもしれないと思いました。クエストの内容に関しても、デザイン学部なのでその地域のデザインや街づくりに興味があったので、参加を決めました。

ーお2人は地元の街に興味があったり、それぞれの学部との親和性だったり、将来のキャリアのことを考えての参加だったのですね。株式会社リビタさんの課題を知った時に、まず2人で何から始めましたか?
吉田さん:
まずはネットで事例を調べました。何か多摩地域でも活かせそうなものがないかなと考えて、イベントやリノベーションした場所の活用事例を調べてみました。地方の場合には、観光として人を呼び込むためのイベントや場所の活用方法もあったんですけど、多摩地域の場合は観光で人が来るというよりも、地域の人が関わるようなものの方が良いのではないかと考えました。かなりたくさんの事例を調べましたが、多摩地域で実際に実現できそうなもの、地域の良さがより伝わるようなものという方向性で絞り込んでいきました。
上田さん:
最初は何から取り掛かったらいいのかというところがとても難しかったですね。まず事例を調べ始めましたが、リビタさんから”学生視点”でという要望があったので、今自分たちのコミュニティで自分たちが参加したいと思えるものは何か、思えないものに対してはなぜ思えないのかなども考えながら進めていきました。なんとなく、今の世の中にミスマッチなコミュニティが運営形態的にあるよねっていう話も出て、それはなぜなのかと。自分たちが参加したいと思えるかどうかかというのもひとつの視点として良いかなと思って、アイデアを出すのに自分たちの視点を意識して考えていきました。
ーそうですよね。最初は何したら良いのだろうと、わからないなかでとりあえず調べることから始めて、調べているうちに何かアイデアが浮かんでくると手ごたえを感じたりしますよね。そういった手ごたえやワクワク感が生まれたりしましたか?
上田さん:
私は調べている段階では、行き詰まる感じがありました。ネットの記事になっているような事例はその土地の特徴を活かしたものが多く、それを多摩にそのまま持ってくるのは無理があるなと。地方だからできているわけで、多摩は住んでいる方や学校、仕事で訪れる人が多いんですよね。だから事例のほとんどが多摩に合わないから参考にならないことも多くて。
自分たちが参加したいと思えるコミュニティって何だろうと考えているなかで、アイデアが出ても世の中に合わないのではないかと思ったり、求められているものがわからなくなったりしました。それでも2人で相談しながら進めているうちに、ようやく多摩に活かせそうなアイデアを見つけたこともあって、そういう時に達成感というほどではないですが、やっと一歩進んだような気持ちになって少し気分が上がりました。

ーお2人はデザイン学部と建築学部ということですが、最初におっしゃっていたようにリビタさんの事業と親和性の高い知識をお持ちだと思います。今回の提案では、どのような点にそれぞれの知識を活かせましたか?
吉田さん:
デザイン学部の”デザインとは何か?”という内容の授業で、見た目の良さや色、形などの目に見えるものだけがデザインなのではなく、より良い仕組みを作ることや良い流れを作ることがデザインだということを学びました。今回のクエストでは、リノベーションという外側のデザイン性を高めて見た目を良くする部分に重きを置くのではなく、その場所をどのように使うか、どう活用して人を集めるかという内側の目に見えない部分の仕組み作りを意識して考えてきたので、授業で学んだことを少し活かせたかなと思います。2410
上田さん:
学部ならではの知識というとわからないのですが、今年1年間学校の先生方のいろいろな研究内容やお話を聞く機会が何度かあって、地域のコミュニティ専門の先生のお話も聞いたことがあります。対話が大事だということを多くの先生方がよく言っていて、地域やコミュニティに関わるといろいろな方がいらっしゃるので、意見を最初から無理にまとめようとすると、どうしても対立が起きてしまったり、まとまりにくいというようなお話しもありました。それを思い出して、2人でお互いに思っていること、感じていること、目指したい方向をきちんと話すことを大切にしていました。

ー今回のプロジェクトへの参加で、学校で学んでいることの理解がより深まったという感じでしょうか。提案内容についてお聞きしたいのですが、”多摩のポストを開けると日本のどこかにつながっている”というのがとてもキャッチーで良い響きだなと思いました。提案内容について詳しく教えてください。
上田さん:
地域に根づいているコミュニティの多くには、義務感みたいなものが伴いますよね。入ったからには責任を持たなければならない、必ず決められた役割や当番がある、集まる日時が決まっていて強制的にそこに合わせざるを得ないというようなことが多いのではないかなと考えました。
今は働き方もライフスタイルもそれぞれ違いますし、いろいろなルールが固定されているコミュニティだと参加のハードルが高いと思うんです。私たち自身がやりたくないと思うコミュニティを提案しても定着しないと考え、こちらからニーズにマッチしないコミュニティをつくるよりは、まず地域の人々からコミュニティをつくってもらうという発想にたどり着きました。
つまり、コミュニティを提供するのではなく、コミュニティづくりから地域の人々に一緒にやってもらうという考えです。方法としては、匿名でのお手紙交換のイメージで、不特定多数との文通が良いのではないかと思って、ポストというアイデアを考案しました。
ーポストはどこかに置いたのでしょうか?ご意見箱のようなイメージですか?
上田さん:
そうなのですが、もう少しライトなイメージです。日々の生活のちょっとした質問や、誰かにちょっと聞いてほしいようなことを書いた手紙をポストに入れてもらいます。そのうちに、またポストに手紙を入れる人が現れます。投函したら、自分の前に投函された手紙が出てきて、そこに返事をすることで循環する仕組みです。
ー今の時代でいうとアナログですが、だからこそ逆に新しい形のコミュニケーションですよね。かなり細部まで詰めて考えられてるなという印象でした。きっと時間をかけて丁寧にアイデアをまとめられたのだと思います。とくに大変だったのはどのような部分でしょうか?
上田さん:
まだポストのアイデアも何も出ていない段階で、リビタさんから対象者を絞った方が良いというアドバイスがありました。経験がなかったので、”対象者を絞る”っていうことがどういうことなのかもわからなくて。逆に今まで持っていた感覚として、絞ってしまうと世界が狭まってしまうのではないかと思いました。
どうしたら良いのかがわからなくて困ってしまったのですが、”自分視点”を意識し始めたところでようやく進めやすくなりました。
ーターゲットを絞るって大切なことですよね。絞り込むことによって、狙ったターゲットが求めるものを見つけやすくなりますよね。
吉田さん:
ポストの案が出てからは、使い方やどういう場所に置くかみたいな具体的な話がスムーズに進み始めたんですけど、そこまでが本当に大変でした。とにかくいろいろな事例があるなかで、どのようなものが多摩地域に合うのか、それで果たして人がつながるのだろうかみたいな自問自答を繰り返す感じで、考えるのも大変でしたし、2人でスケジュールを合わせるのも大変でした。
それぞれがアイデアを持っていてもなかなか共有する機会がなく、2人だけで深く話し合う時間も取れず、後半かなり焦り気味で時間に追われていましたね。お互いが思っていることをすり合わせて、自分だけの考えにならないように話し合いをして、ひとつの案にたどり着くまでがとても大変でした。

ー時間がないなかで、細かいとこまでまとめられていてすばらしいです。クロッシングクエストは終わりになりますが、今後何か継続して活動していく予定などはありますか?
上田さん:
せっかくクロッシングクエストに参加させていただき、リビタさんと一緒にやってきたこともありますし、最後のプレゼンの時にリビタさんから「まず何かやってみるのも良いんじゃない?」と言っていただいたので、もう少し具体的なアクションができるよう考えたいと思います。
まだ私たちのなかでもアイデアがふわふわしている部分があるので、本当に世の中で通用するのか、人が集まるのか、運営できるのかやってみたいなと思っています。
吉田さん:
発表の時にもリビタさんから「おもしろいね、こんなアナログなアイデアを提案されるとは!」みたいに言っていただいて、思ったよりも好印象だったのでまずは先ほど言っていた通り、実証実験をしてみたいと思っています。具体的には、リビタさんのイベントの時にポストを設置させていただいて、イベント参加者に少し協力いただく形でポストを実際に使ってみてもらいたいと思っています。あとは、大学のオープンキャンパスの時にポスト設置して、大学に来る高校生にポストを使って意見交換や質問してもらうのが良いかなと話しています。
ーとても楽しみですね。最後に、クロッシングクエストに参加した感想を教えてください。
上田さん:
私にとっては、初めてのことが多くて最初は本当に難しくて、チームとしてもうまくコミュニケーションが取れていない時期もありました。ひとりで考えている時間も多くて、思った以上に手間取ってしまい、「本当にできるのだろうか」と思ったこともあります。自分たちの視点というポイントに気づくまでは案を出すのが本当に難しかったのですが、2人で相談して試行錯誤しながら少しずつ進み始めてからは、とても楽しくなりました。
初期の頃は果てしない感じがしましたが、道筋も立って楽しめているし、この先にも活かせる経験になると今は感じています。
吉田さん:
クロッシングクエストに参加した当初は、漠然と地域と何か関わりたいと思っていただけで、起業を前向きに考えていたわけでもない私が事業を提案するところまで来れたということに驚いています。入学した時点ではこんなことができるとは考えたこともなかったですし、ここまで来れたことに自分で本当に驚いています。
初めの方はうまくコミュニケーションも取れていなくて、自分のなかで考えているだけという感じで、本当に実現するのだろうか、このままうまくいかないのではないかという不安もあって前向きに取り組めていませんでした。そんな時に、上田さんやサポートしてくださるスタッフの方々といろいろお話しさせていただいて、始めは自分たちの想像で「おもしろそうだよね」と言っていたことがだんだん形になってきて、実現させられる道筋が明確に見えてきている感覚が今はあります。
あんなに最初は不安で自分にはできる気がしなかったのに、いろいろな方々に支えられてここまで来れたことが本当にうれしいですし、なかなかできる経験ではないので、参加して本当に良かったと思っています。
ー迷ったり悩んだり、くじけそうになったりしながらも、チームで支え合って形にしてきたことは、一生忘れられない経験になりますね!ぜひ実証実験を実現して、また結果を教えてくださいね!本当にお疲れさまでした。